新潟の豊かな自然が育む伝統の味、「笹団子」や「お団子」。私たち江口だんごは、明治の創業以来、この郷土の味を次の世代へとつなぐため、日々お菓子作りに励んでまいりました。
一口食べれば、口いっぱいに広がる爽やかな笹・よもぎの香りと、もっちりとしたお餅の食感。それは新潟で暮らす人々にとって、どこか懐かしく、心休まるひとときの味ではないでしょうか。 しかし今、この当たり前だった「郷土の味」が、これまでにない大きな危機に直面しています。
■ 山に人が入れない。熊の出没がもたらした原料危機
笹団子に欠かせない「笹」「よもぎ」は、これまで地元・新潟の野山に自生する野生のものを、地域の採り手の方々が摘んできてくださったものを使っていました。 しかし近年、ニュースでも連日のように報道されている通り、里山への熊の出没報告が相次いでいます。山林での収穫には常に危険が伴うようになり、これまで採ってくださっていた方々が激減してしまいました。
「このままでは、地元産の笹やよもぎで団子を作ることができなくなるかもしれない……」
特によもぎの確保が年々深刻さを増す中で、私たちは強い危機感を抱いていました。伝統の味を守るためには、野生のよもぎを待つのではなく、自分たちの手で、安全な場所でよもぎを育てる仕組みを作らなければならない。その模索が始まりました。
■ 与板の米農家との出会い。耕作放棄地を青々とした畑へ
そんな中、私たちが元々山古志地域で行っていたよもぎ収穫の取り組みを知った、長岡市与板地域の米生産者の方から「自分たちもよもぎのプロジェクトに参加したい」というお声をいただいたのです。 里山と呼ばれる地域では今、農家の高齢化や後継者不足により、年々使われなくなる農地(耕作放棄地)が増え、荒れ果ててしまうことが課題となっています。
「市街地などでは車の排気ガスや農薬が心配で車や人が少ない自然豊かな場所が良い。でもそのような場所は熊の出没でよもぎが採れない」という私たちの課題と、「使われない農地をなんとかしたい」という地域の課題。 この2つが結びつき、地元の米農家さん、そして食品販売会社さんらと手を取り合う形で、新たな挑戦が与板の地で動き出しました。
■ 「里山めぐりプロジェクト」が目指す循環の形
私たちはこの取り組みを「里山めぐりプロジェクト」と名付けました。
使われなくなった農地(耕作放棄地)をよもぎ畑へと再生・活用して本格栽培を行うことで、原料の安定調達だけでなく、里山の自然保護、地域の新しい仕事の創出という「循環‐めぐり‐」を生み出します。
荒れていた土地を美しい緑の畑へと再生させ、地域の人々と共に幸せな「循環」を創り出していく。ここで育てたよもぎは「越後里山よもぎ」としてブランド化を推進してまいります。

■ 未来へ共につなぐ「里山めぐりプロジェクト」メンバー紹介
このプロジェクトは、地域の未来と郷土の味を守るという熱い想いを持った、多様なメンバーの協力によって成り立っています。
- 稲作まる山・小林農園(長岡市与板地域・米生産者)
長岡市与板の地で、豊かな自然と向き合いながらお米を育てるプロフェッショナルです。今回のプロジェクトでは、地域の耕作放棄地をよもぎ畑へと蘇らせ、深い愛情を込めてよもぎの本格栽培を担ってくださっています。
- セキシン産業(食品販売会社)
地域の食の流通を支えるパートナーとして、農家さんや私たちと手を取り合い、プロジェクトの推進や商品の展開を共にバックアップしてくださっています。
- 江口だんご
生産者の皆様が育ててくださった最高のよもぎを「郷土の味」へと仕上げ、お客様のもとへ責任を持ってお届けします。
■ 新ブランド「越後里山よもぎ」に込めた願い
こうして与板の美しい里山で、生産者の方々が愛情を込めて育ててくださったよもぎは、生命力が強く、年に数回収穫することができます。なかでも雪解けの春にいち早く芽吹く「一番よもぎ」は、香りが極めてまろやかで、味わいも格別です。まさに、厳しい冬を乗り越えた新潟の自然からの最高の贈り物です。
熊の被害、そして里山の過疎化という大きな壁にぶつかったからこそ生まれた「越後里山よもぎ」。 これは単なるお菓子の材料ではありません。新潟の美しい里山の風景を守り、地域の人々と共に未来へ伝統をつなぐ、私たちの決意の結晶です。
新しく生まれ変わった与板のよもぎ畑から、今年も最高の香りと共に餅やお団子をお届けしてまいります。これからの「江口だんご」と、地域が織りなす新しい挑戦のプロジェクト「里山めぐりプロジェクト」を、どうぞ温かく見守っていただければ幸いです。
